失われた記憶

上の息子は現在4歳8ヶ月。ついに胎内記憶が失われてしまったようだ。育児を始めてから数年が経ったけれど、その中でもこの事は深く私の心を打った・・そんな話を少し書き残しておこうと思う。

胎内記憶について尋ねると、子供は答えてくれる、お話ししてくれる。けれど聞くタイミング・頃合いが大事。一度きりしか答えてくれない事もある。そのうち子供自身の記憶から失われてしまう。などなど胎内記憶についてたくさんの情報がある。そんな溢れるほどの情報の中から夫と相談して決めたのは、3歳の誕生日に聞こう、と。

3歳の誕生日当日は聞いても話してくれる・・には至らなかった。けれど数日後だったと思う、寝る前お布団でゴロゴロ、気持ちも落ち着いている時間に改めて聞くと話し始めた。寝る前のほんのひと時というのは、子供がホントのキモチをお話ししてくれる貴重な時間でもある。当時のメモを見ると・・「ママのお腹の中に居た時のこと覚えてる?」の問いに、含み笑いをしながら時折はぐらかす様にふざけて体をゴロゴロさせながら「ポコポコしてた、暗かった、電車の音がした、寂しかった、苦しかった、おへそのうんち」など言い始めた。「ママの声は聞こえた?- 聞こえない」「ママがお腹を触っていたのわかった?- わからない」「産まれる時、外に出てきた時どんな気持ちだった?- 出てくる時せまかった」

また別の日には「暗くなかった、ママとお父さんの声が聞こえた、苦しかった」さらに別の日には「目は開けなかった、ママの声は聞こえなかった、出てきて楽しかった」「ホース(へその緒)見えた?- ホースって何?見えなかった」また別の日には「早く帰りたくて(外に出たくて)お腹をボンって蹴ってた、暗かった、寂しかった」などなど

こんな問答がつい最近までできていた。1年以上に渡って胎内記憶について話してくれていたことになる。聞き過ぎない様に、でもまた聞いてみたくて。。

つい数日前に、いつもと同じ様に「ママのお腹の中に居た時のこと覚えてる?」と尋ねると少し時間をためていて、いつもと表情が違う様に感じたそのすぐ後、「うーん、わからない、忘れちゃった」と。

なんだかすごく寂しかった。幻想的で夢を見ている様な世界に連れて行ってもらっていたそんな問答の時間だったから。。いや彼にとっては幻想ではなく現実のことだったのだけれど。。

子育てにおいて、天使の時期はすぐに過ぎてしまう・・とよく聞くけれど、子供が天使の時期っていつ頃のことなんだろう。それは小さな子供独特の世界観を持っているそんな時期のことなのかなと私なりに思う。小さな子供にしか見えない何かがありそうな・・隣のトトロの様な世界観。その幻想的で、大人がどう頑張っても取り戻すことのできない様な世界観。子供たちと遊んでいると、よくその世界に連れていってもらえる。胎内記憶のやりとりは私にとって、その幻想的な世界観の核に触れられた様な、そんな体験であった。

胎内記憶を失ってしまった息子は、ファンタジックな時期を越してついに人間界に足を踏み入れたのか・・・ますます目が離せない笑。


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